Rondade │ sub-culture Ⅱ / the player 06/05-06/22,2021

Rondade │ sub-culture Ⅱ / the player 、延長期間も含め大盛況のうちに会期が終了致しました。たくさんの方にお越しいただきありがとうございました。

今回は、3組のアーティストの作品を、出版レーベル Rondadeがプロデュースした空間に再配置、再設定し新たなコンテクストを作り出す試みでした。

企画・キュレーション・空間演出をしていただいたRondade 佐久間さん、展示いただいた3組のアーティスト、SYSTEM OF CULTURE、Masafumi Tsuji、So Mitsuya さんにも改めて御礼申し上げます。

Photo by Masafumi Tsuji

SYSTEM OF CULTURE
@systemofculture
東京をベースに活動する2人のユニットで、写真を中心に作品を制作。
今どこかにある現実を切り取ったような絵は、作為的な「演出」によって描画される。
多様な情報へフラットにアクセスできる現在、ナショナリティや時代性を超えた普遍的な表現のありかたを思考する。

Masafumi Tsuji
@masafumi_tuji
1993年 神奈川県横浜市出身。
2017年 多摩美術大学 造形表現学部映像演劇学科卒業。
2020年 個展 「INDIVIDUAL/INDIVIDUAL PRIMES D:1」企画:Rondade/situation room 03

So Mitsuya
@somitsuya
1990年京都府生まれ。IMA gallery所属。2018年、JAPAN PHOTO AWARDシャーロット・コットン賞、デヴィット・トロ(DIS)賞を受賞。国内外で作品を発表している。

Rondade
@rondade_contents
publishing platform / publisher

これまで、R for Dでのイベントを記録したり振り返ることがなかったのですが、 アーカイブと変遷の記録として、こちらに残したいと思います。

企画のきっかけ

R for Dが3周年を迎え、2つのことを考えていました。一つは、ファッションを題材にしたファッションマガジンの発行、もう一つが内装のアップデートです。

ファッションマガジンは、ブランドやアイテムの魅力を伝えることは念頭にありつつも、純粋に写真自体を見て楽しめるものという位置付けで、発表方法を探っていました。その中で、通常の製本でも物足りないし、一枚一枚をバラバラにして箱に入れるのも見たことがある。。と表現方法の模索を繰り返していました。

もう一つが、内装のアップデート。これまでは、服のレイアウト・ディスプレイを、建築現場で使用する単管と主に園芸で使用する鉄パイプで組んでいました。フレキシブルがコンセプトで、すぐに外したり加えたりと変化できること、また量産品を別の用途で用いるDIY的な裏テーマもありました。

元々頻繁にレイアウトを変えていたので、ほぼ出来る限りの使い方を試しきった時期でもあり、またどうしても残る縦長の圧迫感を回避できる新たな方法を探していました。

そんな中、紹介していただいのが出版レーベルRondadeでした。

僕が初めて見たのが、サイズや種類の異なる紙をバインダーで留めたアートブック。大きさが異なることで干渉し合う前後の写真、畳んだりカットされた紙をめくるという行為が生み出す体験を含んだその本に、新しい本のあり方を示されたような気分でした。

また、アートブックを発表する際の空間づくりも独創的で、本だけで見せない、空間でも表現する立体的な展示にも興味を惹かれました。

ぜひご一緒したいと心が動かされ、出版レーベルであるRondadeに、お店の什器と空間のアップデートをお願いすることになりました。

”服を隠す”、服屋の什器

服自体のもつ物量感、色味は意外と存在感があり、R for Dは多くのテイストのブランドが同居するお店のため、服の情報過多が起きていました。

当初は、洗練された見やすいお店が持つ緊張感や入りずらさが苦手なので、雑多な中に自分のための服を探す古着屋のようなイメージで内装を考えていました。これはこれで一応正解だったのですが、もう少し整理し、必要な情報が伝わるようにアップデートしたいというタイミングでした。

そこで、”服を隠す”というテーマでお願いしました。

服屋は一般的に、ハンガーに服がかかり、それを支えるラックがあります。それらは基本、固定されていて、可変と言っても少しの移動しかできません。また、服が主役のため、それがどんと一覧で見られるような設計になっています。

もちろん、服を買うというシーンだけ考えればそれでいいのですが、多くの物量やテイストがある場合は、なかなか成立させることできません。またどこのお店でも同じ体験しかないというのも、ファッションの見えていない課題だと感じていました。

”服を隠す”というのは、ある種服へのフォーカスを局所的にコントロールする、という意味合いで、導線や目線、また1着への意識の濃度を上げることを意味しています。

そして、今回Rondadeから提案いただいたのが、木の壁。基本は、規定サイズのサブロク板2枚を直角に組み立てたL字の自立する壁です。これらを組み合わせ、再配置することで、新しい人の動き、新しい服の見せ方を生み出すという試みです。

まずはプロトタイプ的に、塗装もしていない買ったままの状態で組み立て、実験をしながらアップデートしていくことに。

簡易的でありながら必要な機能を備えた木の壁に、お店にあったLED蛍光灯、木板、違和感を生み出す端材などを組み合わせ、配置を繰り返して完成していきます。

今回の空間のハイライトになった三角のオブジェも、実はお店で使っていたL字のテーブルを立ち上げたもの。さらに使用しなくなった単管はまとめて床に組みたて、新たなオブジェとして登場しています。

空間を作り、作品を再配置、再設定

写真展は、Rondadeがキュレーションする3組のアーティストの展示でした。それぞれテイストも異なり、サイズも異なるため、事前に配置を決めることは不可能、というよりもRondadeの空間づくりにおいては、場所の特異性とアーティストの個性を両方活かすことが最低条件になります。

お店の什器として設計された、木の壁を含んだ空間の配置を先に行い、そこに当てはめるように展示空間が構成されていきました。

それぞれの作品のベストな場所、お互いに干渉し合うことでの距離や見え方の変化、導線と視線の変化。

写真展といえば、白壁のミニマルな空間に整然と写真が並ぶイメージですが、その一覧性は、見やすい一方、見やすすぎるという性質も持っています。これは服と一緒で、ぼやっと全体像を把握させるのではなく、能動的な観察への動き、隠れているから見たいという衝動がデザインされています。

どの角度から見ても写真が視界に入り、他の写真が干渉してくる。それを立体の空間の中で、それも服に囲まれた中で成立させることは、もちろん経験と即興的なセンスを問われる行為です。

今回の展示は、素晴らしい写真を見るいう楽しみもあり、それぞれのアーティストの作品から考えることも大いにある企画でした。

一方で、展示のセオリーをアップデートし、もっと言えばギャラリーではなく服屋の中で、それも複数のアーティスト作品を同時に見せることが成立するという新しい表現方法を思考する機会だったとも言えます。

展示を終えて

新しい什器の使い方を教えてもらう側面もあった初めての展示。服とのつながりや、人の流れやコミュニケーションがどう変化するのか、設置した段階では未知数でした。

実際の人の動きを見ると、動き方はそれぞれですが、ぐるぐると回遊し、時に写真を撮り、また違う角度からも鑑賞する方が多かった印象です。

また、アートブックを置いたテーブルを用意したことで、じっくりと話せる場所ができ、初対面同士のコミュニケーションも生まれました。壁に貼られただけの写真展では得られない、半強制的に能動的に動かされる状況と体験が、見た後の積極的なコミュニケーションにつながったのだと感じます。

元々、服屋でアートの展示をやること自体が稀だと思います。それはファッションとアートは分けて考えられ、もしくは敢えて分けられたものでもあるためですが、今回は動いて見るという体験から、シームレスに写真から服を見る行為に繋がっていました。これは逆に言えば、美術館やギャラリーでは、できない空間であり体験だったと思います。

この大きな空間でお店を始めた理由には、僕らが好きなブランド・ファッションをよりたくさんの方に知ってもらいたいという思いがありますが、同時に面白いクリエイター・アーティストとファッションを繋げたいという思いもあります。

今回の展示は、新しい什器のお披露目でありプロトタイプとして大成功となりました。今後も服の什器としてももちろん、Rondade キュレーションによる展示や企画も継続していただく予定です。配置や使い方、展示の内容を組み替えることでアップデートできるシステムですので、引き続きお楽しみに。